『なぜジェンダー教育を大学でおこなうのか: 日本と海外の比較から考える』

村田晶子、弓削尚子編

 

近年、「女性活躍」が叫ばれる一方で、会社・企業では女性や性的マイノリティーへのハラスメントが後を絶たず、有名大学の男子学生による性犯罪もたびたび報道されている。また、女性蔑視のCM・広告・コンテンツが「炎上」することも多い。「男女格差が世界で111位」という日本の現実を私たちは生きているのである。

ジェンダー・センシティブな視点はなぜ必要か、それを学生が身につけるには教育カリキュラムをどう組み立てるのか、学生たちの主体的な学びをどう引き出して並走するのか。
アメリカ・フランス・中国の大学でのジェンダー教育の歴史や実践例を紹介し、国内の教育の実情、社会人教育・男性学の視点、LGBTIの学生への対応も提示して、ダイバーシティー環境の整備=社会の多様性に直結する大学でのジェンダー教育のあり方を提言する。

 

目次

 

はじめに 弓削尚子

第1章 北米の大学における女性学およびジェンダー研究の歴史的系譜と現在 シャラリン・オルバー[ゲイ・ローリー監訳、宮下摩維子訳]
 1 北米の大学における女性学の現状
 2 北米の女性学の歴史的系譜
 3 女性学およびジェンダー研究をゲットー化しないために

解題 シャラリン・オルバー氏の知の冒険 ゲイ・ローリー

コラム ドナルド・トランプの時代の女性学およびジェンダー研究の展望 シャラリン・オルバー[ゲイ・ローリー監訳、宮下摩維子訳]

第2章 フランスにおけるジェンダー教育の軌道――高等教育機関を中心に クリスティーヌ・レヴィ
 1 ジェンダー研究をめぐる環境とジェンダー教育の歴史的・社会的背景
 2 高等教育機関での新しい動き

解題 「もう一つの可能性」としてのジェンダー・スタディーズ 矢内琴江

コラム フランスでのジェンダー概念をめぐる論争 クリスティーヌ・レヴィ

第3章 グループを育て、社会とつなげる――大学でのジェンダー教育を活性化する新しい試み 柯倩★女偏に亭★[熱田敬子訳]
 1 若者の悩みに答え、注目の社会問題に介入する――授業の主題設定
 2 グループを育成し、学生の主体性を育てる――教育方法の探究
 3 社会とつながり、ボランティアから学ぶ――知識と行動の転化
 4 ボランティア学習の事例――『とことんヴァギナ・モノローグス』の上演と社会への貢献

解題 『まんこ語り』が育むフェミニズム・アクション 熱田敬子

コラム 中国における行動派フェミニストの成長とジェンダー・バックラッシュ 熱田敬子

第4章 男性学・男性性研究とジェンダー教育の重要性 伊藤公雄
 1 男性学・男性性研究の誕生と発展
 2 男子・男性を対象にしたジェンダー教育の重要性

コラム 学生と性暴力 弓削尚子

第5章 日本の大学におけるジェンダー教育の課題――社会を変革する希望の糧に 村田晶子
 1 ジェンダー教育をめぐる日本国内の状況
 2 高等教育におけるジェンダー教育の取り組み
 3 日本の高等教育におけるジェンダー教育/研究の課題

コラム 学生が作る「ダイバーシティ・マップ」 安野 直

終 章 高等教育とジェンダーをめぐる今後の課題――国際シンポジウムでの議論を踏まえて 森脇健介
 1 ジェンダー教育の歴史と現在の課題
 2 フランスにおけるジェンダー・マスターコースの設置と専門職教育
 3 『ヴァギナ・モノローグス』の実践と授業の方法論

むすびにかえて 村田晶子

ジェンダー研究/教育の深化のために: 早稲田からの発信

小林 富久子、村田晶子、弓削尚子編

 

これからの「ジェンダー研究/教育」に向けて──
創立15周年を迎えた早稲田大学ジェンダー研究所による「ジェンダー研究/教育」の成果。文学、表象・メディア、歴史、法・社会等、各専門領域の「ジェンダー研究の展開」と、 教育実践をもとにした「ジェンダー教育のあり方」。ジェンダーの視点に立つ専門領域による研究と、教育実践の成果による計24編の論考を収載。ジェンダーを学ぶ際の思考の展開を支え、今後の「ジェンダー教育」に新たな視座を与える。

 

目次

第一部 ジェンダー研究の深化のために
【文学】
◉エリザベス・ギャスケルの『ルース』における〈堕ちた女〉の表象
                            【木村晶子】
◉詩人ジナイーダ・ギッピウスについて
──ロシア文学のクィア・リーディングのために 
                            【草野慶子】
◉メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』を読み直して
――主にジェンダーからの考察として
                            【鈴木理恵子】
◉ソ連後期のフェミニズム思想
──ユーリヤ・ヴォズネセンスカヤの執筆活動から
                             【高柳聡子】

【表象・メディア】
◉専業主婦の揺らぎとゆくえ
――女性雑誌『主婦の友』と『VERY』を手がかりに
                             【石崎裕子】
◉映像/文学作品における戦時下の女性の描き方
──日米男性作家間の比較から考える
                            【小林富久子】
◉「バルドー神話」と1950-60年代のフランスの女性を巡る状況の考察
                            【中山信子】
◉日本におけるレズビアンの隠蔽とその影響
                            【三橋順子】
◉女性たちの創作活動を支える知の生成
──カナダのフェミニズム・アートのギャラリーを事例にして
                            【矢内琴江】

【歴史】
◉戦時下における「大陸の花嫁」
──警察官家庭婦人協会による「花嫁学校」の活動に着目して
                           【伊藤めぐみ】
◉山川菊栄の社会主義フェミニズム論の今日的意義
                           【鈴木裕子】
◉選ばれた書簡
──『書簡集(白バラの声)』に見るハンス・ショルのイメージ伝達戦略
                           【村上公子】

【法・社会】
◉ニュージーランドの「非核法」制定への道とフェミニズム
                           【千種キムラ・スティーブン】
◉メキシコの貧困削減政策「プログレサ‐オポルトゥニダデス」と母性主義
                           【畑惠子】
◉「戦後日本の覇権的男性性としてのサラリーマン的男性性」説の考察
                           【細谷実】
◉震災とジェンダー
──母親たちの主体化と社会教育
                           【村田晶子】
◉オランダにおけるピルの受容とその歴史的・政治的過程
                           【森脇健介】

第二部 ジェンダー教育の深化のために
◉ジェンダー法教育の意義と課題 
──早稲田大学ロースクールの経験を中心に
                           【浅倉むつ子】
◉大学におけるジェンダー教育実践と参加型学習の意義
──KH Coderによる分析を通して
                           【安部芳絵】
◉セクシュアル・マイノリティ問題に関する教師の「当事者性」と「聴く力」
──DVD『先生にできること──LGBTの教え子たちと向きあうために』制作を手がかりにして
                           【金井景子】
◉女子学生のためのキャリアデザイン学習内容と方法への考察
──早稲田大学文学学術院講義科目「女性のキャリアデザイン」実践から
                           【近藤牧子】
◉映画化された児童文学とジェンダー
──ジェンダーを考える一方法として
                           【中村采女】
◉大学で西洋ジェンダー史を教えるということ
                           【弓削尚子】
◉早稲田のジェンダー教育
                           【村田晶子・弓削尚子】